身体が持つ治癒の力
掲載日:2023.05.09
4月30日~5月6日までGWの真っ最中に研修トレーニングを受けていました。
3年間にわたるトラウマ治療の研修トレーニングの最後のフェーズでした。
3年前にスタートする時点では講師がブラジルから来日するはずでしたが、
ちょうどコロナ感染が広がり世界的に交流が途絶えた時期と重なり
急きょ初回からオンライン受講という形式になりました。
1週間の研修トレーニングを年に2回、3年間受けてきました。
時差が真逆のブラジル在住講師との調整をしながらの研修トレーニングでした。
コロナもおさまり最後のフェーズで講師がブラジルから来ることができ、
受講者も全国から札幌に集結しました。
100人以上の受講希望者から選ばれ最後まで残った四十名は
精神科医、小児精神科医、臨床心理士、公認心理士が大半で、
そのどれにも当てはまらないのは私を含め数人でした。
今回の研修は、私にとって一番収穫があった内容でした。
トラウマ治療の最後のフェーズは、クライアントさんの身体に直接
(といっても衣服の上から)触れて、
身体に刻まれているトラウマに働きかけるというものでした。
「体に触れる」治療は世の中にいろいろあります。
でも私は、今回学んだ手法がとてもいいと感じました。
クライアントさんの身体の一部を動かしたりずらしたり、圧を加えたり、
エネルギーを注入したりといった、セラピストが「何かする」ようなやり方ではなく、
「クライアントさんの身体が本来持つ治癒力をサポートする」
そのために「セラピストの手を最適な場所にそっと置く」だけの手法で、
基本的にクライアントさんが「自ら良くなる力を持っている」ことを
信頼しているところが一番気に入りました。
しかもそれがとてもパワフルなのです。
宗教やスピリチュアルな関わりで行われるようないわゆる「手かざし」とは一線を画します。
「人間の身体に関する科学的知識」の下で、
クライアントさんとコミュニケーションを取りながら適切な場所を探っていき
そこにそっと手を置くことで、
クライアントさんの身体に刻み込まれているトラウマが浮上し、
その身体本来の状態へとおのずから変化していく、
そのことをセラピストは手助けする、というものです。
(そう私は理解しました。)
クライアントさんに「何かしてあげる」というより、
「セラピストとしてどれだけピュアでいられるか」が問われると私は感じました。
研修は朝9時から13時過ぎまで講義で、いわゆる新しい「知識」を得る時間でした。
多くは、トラウマが刻まれる場所、関節や隔膜、臓器、神経系などの知識で、
単に身体解剖図を理解するものとは違いますが、
ある程度その知識も必要となります。
今でも「横隔膜」とか「胸郭」「腎臓」「甲状腺」「脳幹」「前皮質」「小脳テント」
などの単語やイメージが頭の中をグルグルします(笑)。
身体の「部位」とそれぞれの「働き」と「相互作用」という知識を頭に起きながら、
クライアントさんと最適なコミュニケーションを取りながら
どこに自分の手を置くことでトラウマ解消を促進していけるかを
プロとしての意識と直感を使って関わっていきます。
午後は、その実践練習を参加者同士で行いました。
意外な驚きは、どうやら私はこのやり方に才能があるようなのです。
私は普段、セッションはすべてオンラインで行っています。
クライアントさんと直接会ってセッションをしたことがありません。
初めて対面でのセッションにもかかわらず、
私は練習相手の受講者の身体の状態をほぼ的確に判断することができ
その人のどの部分にどのように手を置いていけばいいかが直感でわかりました。
他の受講者たちがぎこちなく不安げに練習をしている(初めてだから当たり前です)中で、
私はほんの少しコツを教えてもらうと、昔知っていたことを思い出したかのように
自然な流れで触れていくことができました。
受講仲間からは「紀代子さんは天性のセラピストですね」と驚かれ、
指導者にも「この手法を初めてやったとは思えない」と言われました。
私自身も違和感なく、自然に「次はどうしたらいいか」が浮かび、
一番私にフィットしたやり方のように感じました。
これからしばらくは北海道にいる仲間たちと復習や練習会をしたり、
私自身がクライアントとして有料でこのセラピーを受けたりしながら
確実に力をつけていきたいと思っています。
実際、研修トレーニング期間中に、一度私自身もこのセッションを受けてみました。
そしてこの効果を実感しました。
心に傷がなく生きている人はいないと思います。
みんな何らかの痛みを抱えて生きていると思います。
それは意識していることもあれば、
意識に浮上することはなくてもその人の生き方に影響していることもあります。
今の私はかなり現状に満足していますが、
「この私にどんなことが起きるかな?」と好奇心を持って
この触れるセラピーを受けてみました。
静かに優しくタッチを受けていきましたが、特にこれといったことは起こりません。
それでもセラピストが丁寧に手の位置を変えていき静かに待っていると、
背中に痛みが生じてきました。
驚きながらもその痛みを感じていると、顕在記憶では決してたどれなかった
潜在記憶がかすかに浮上してきました。
とても幼い頃に、背中に衝撃を受けて動けなくなっていた記憶です。
それは、何かに当たったのか、どこかに落ちたのか、誰かに押さえつけられたのか、
はっきりとした記憶はありませんが確かに背中に衝撃を受けて
動けなくなっていたことだけは思い出しました。
そのかすかな思い出と共にセラピストの手を感じていると、
しばらくして背中の痛みが徐々に解放されていくことを感じました。
これが私が体験したことです。
そして後日談がありました。
このセラピーを受けた2日後に、
夜寝ている時に背中が波打っていることに気づき、目を覚ましました。
「夢かうつつか」という状態でしたが、少し不安を感じつつも
「私の身体が必要なことをしているのだ」と信頼してそのまま様子をみていると
しばらくして背中の動きはおさまりました。
その後3日続けて、私は毎日10時間以上眠りました。
ぐっすりと深い眠りをたっぷりと体験しました。
もともと眠りが浅いタイプですが、
努力と工夫でここ二十年ほどはけっこう良い睡眠を得られていました。
そして今回、背中の緊張が取れて、更に質の良い睡眠を得られることとなりました。
幼いころの何らかの体験から何十年もの間、
気づかずにロックがかかっていた背中の緊張が解放され
私は安眠を手にすることができたようです。
トラウマ治療は「何があったか」を特定する必要はありません。
その「何かが、今もどのようにその人の人生にマイナスに影響しているか」
「その人が生きる上で障害となっていることから解放される」ことが目的です。
今回の私のセラピー体験も、「何があったか」は明確に思い出せませんでした。
ただ、気づかずに何十年も抱えてきた背中の緊張が取れて、
たぶん安眠だけでなく日常生活も更に楽になると思います。
過去に「何があったか」「どんな体験をしたか」を
明確に言葉にすることができないクライアントさんは多いです。
「よくわからないけれど苦しい」「生きるのが辛い」
そう感じている人たちに、このセラピーは役に立つと感じています。
一日も早く力をつけて、クライアントさんたちにこのセラピーセッションを提供したい。
ただ問題は、私のクライアントさんの多くは本州在住です。
北海道まで来てもらわなければなりません。
悩ましいところです。
当面その悩みは棚上げして、まずは確実に力をつけていこうと思います。
今回の研修に続き、今週木曜から日曜にかけて4日間の別の研修があります。
偶然重なってしまったのですが、
研修を受けるのも実はけっこう大変で、これを最後に
研修や勉強、研鑽はいったん終了としようと思っていました。
でも、少なくとも自主練は続けていくことになりますね。
私の修業はもうしばらく続きそうです。