痴漢に遭った ・・・ 性犯罪を考える
掲載日:2017.02.07
タイトルを見て、私が痴漢に遭ったと思いましたか? 残念ながら、最近は痴漢もスルーするほど女子力が低下している私です。痴漢に遭ったのは、娘です。
娘が3泊4日で東京へ遊びに行ってきました。世界一周ひとり旅で出会った友人の一人が東京でお店を出すお祝いもかねて、他の友人たちにも久しぶりに会いに行ってきました。
その娘が東京から帰って来るなり、「私、痴漢にあった」と言います。「自分にびっくりしたわ」とボソッと言いました。「フリーズしたの?」と私は聞き返しました。
娘は、私の育て方なのか世界一周ひとり旅の影響なのか(たぶん両方の影響だと思いますが)、はっきりとモノを言いますし行動力もあります。今のバイト先でも、おかしなことや理不尽なことに対しては上司にモノ申しているようです。でも、女性によくあるように感情的に引きずることはなく、伝えるべきことを伝えた上で仕事はしっかりとこなしているので、かえってそのスッキリはっきり感が上司に気に入られているようです。同僚からは姉御(あねご)のように慕われ、娘の言動は親会社の社員さんからも一目置かれているようです。
そんな「きかん気」で「男勝り」な娘も、さすがに痴漢にあっては固まってしまい何も言えなかったのだろうと、私は推察しました。かわいそうに、ショックだっただろうと、一瞬でも同情した私が甘かった。
「自分でもあんな反応をするとは驚いたわ」という娘。「え?フリーズしたんじゃないの?」と問う私に、「その逆!」と言います。
駅のホームを女友達と歩いていたら、男が追い越し際に娘のお尻をペロンと触って行ったと言います。その瞬間に、「何するんだ!」と男のお尻に蹴りを入れたというのです。男は振り向きもせず、ホームの階段を駆け下りていったと言います。びっくりしたでしょうね。きっと常習犯だったのでしょうね。まさか蹴られるとはね。
娘は「蹴りはブーツに限るわ」とぶっそうなことを言います。「どうして?」と尋ねると、「先がとがっていて、尻に見事に突き刺さった」と言うのです。「痛かっただろうね」と思わず言った私は、「誰に同情しているのよ!」と娘に笑いながら叱られました。「(痴漢に遭って)トラウマになることだってあるんだからね!」と言われ、「そうだ!」「その通り!」「よくやった!」と、改めてその行動力をねぎらい(?)ました。
「それにしても、よくそんなことができたね」と言う私に、「世界一周で、特にインドの80日間滞在で鍛えられたからね」と娘は応えます。旅の間は、いつどこで何をされるかわからないので「自分の身を守るために常に警戒していた」と言います。細かく言うと、南米では相手は銃を持っている可能性が高いので抵抗することはしないとか、インドは命の危険は少ないがしつこくてウザくて嘘つきが多いのでハッキリと拒否やケンカをするなど、国によって対策が異なるようです。痴漢に遭った瞬間に、インドでのそれがよみがえって、考える間もなく、気づいたら怒鳴って蹴っていたんですって。
そんなだから、足掛け2年半の世界一周ひとり旅でも、ギリギリ犯罪にも遭わず無事に帰って来られたんですね。もちろん多くの人たちが娘の無事を祈っていたくれたおかげだと思いますが、娘の努力も大きかったんだなと改めて思いました。
「今までに人を蹴ったことはあるの?」と尋ねると、「初めて」との答えでした。しかも今回が生まれて初めての痴漢体験だったそうです。それにも驚きました。30年女をやっていて一度も痴漢に遭ったことが無かったなんて!
「私、痴漢や性暴力の被害者に共感することができない人間だわ」と娘は続けます。「どうして?」と聞くと、「だって、そういう時って体が固まって声を上げることもできなくなるって、よく言うでしょ」。なるほど、私も高校生の時に札幌の電車で初めて痴漢に遭った時、声も出ず固まりました。娘は、「私は瞬間的に怒鳴って蹴りを入れたんだから、真逆だよ」と言います。う~ん。初痴漢体験でその反応ができるなんて、娘のたくましさに感服します。
バックパックを背負って世界を周った娘は、体は細いですがけっこうタフです。波照間島でサトウキビ狩りをしていた時には、男性に負けない仕事ぶりだったので、毎年組長から「今年も来てくれ」と連絡が来ていました。そんな娘の一蹴りは、かなり痛かったでしょう。でも体の痛みはやがて癒えます。しかし、痴漢に遭った人の不快感や心の傷は簡単には癒えません。「痴漢男は、今回のことがトラウマになればいいのに」と思う私は、やはりまぎれもなく「きかん気」な娘の母親です。
今、国は性犯罪に対する刑罰の見直しをしていますが、私に言わせればまだまだ罪は軽すぎます。性犯罪がどれだけ被害者の心を傷つけるか、その認識が甘すぎます。子どもへの性犯罪を「いたずら」と表現する時点で、問題の深刻さをまったくわかっていないと思います。その後の人生をどれほど苦しめることになるかということに、もっと真剣に向き合って考えるべきです。
性犯罪だけは、被害者が受ける痛手や苦しみ、その後の人生への影響を考えれば、再犯できないプラスアルファの罰は受けてしかるべきだと思っています。普段は暴力的に関わることは好まない私ですが、「レイプなど性犯罪者は、二度とできないように切り落としてしまえ!」と思っています。罪が軽すぎるから、その後も同じことが繰り返されたり多くの被害者が出たりすると思います。犯人に大きなダメージが与えられる刑が科せられれば、性犯罪はかなり減るかもしれません。
男性が法律を作ったり刑罰を決めたりする中心にいる間は、性犯罪に重罰を実現するのは難しいのかもしれません。自分の快楽のために他人の人生を大きく傷つけて平気でいるレイプ犯には、他の犯罪と比べても重罰を科すべきだと私は思います。レイプ犯のナニを切り落とす刺客チームでも作りましょうか。レイプ犯を刑罰で正当に罰することができないならそのくらいあってもいいと、声を上げられずに苦しんでいる多くの人たちのことを思うと、そんな思いにもなります。
いずれにしても、種類を問わず性犯罪の被害者の心の傷の深刻さを、社会はもっと認識すべきだと思います。