大人の修学旅行
掲載日:2016.06.17
私が「大事!」と思う日には、必ずと言っていいほど天候が崩れます。崩れるどころか、暴風雨・吹雪などとんでもない天候になることが少なくありません。
そんな私が「どうか落ち着いた天候であって!」と願った3日間がありました。当初、天気予報ではその3日間は「晴れ」の予報でした。ところが日にちが近づくにつれ、徐々に怪しくなっていき、とうとう直前には「雨」の予報になりました。
去年私が「死にかけた」ことを知ったコーチ仲間から「顔を見に行く」と連絡がきたのは、春先だったでしょうか。10年以上前に、プロコーチとして学び合った仲間です。少数精鋭のトレーニング機関で同期9人で切磋琢磨し、意見を戦わせ、時には喧嘩もした、そんな仲間です。中でも京都の彼と東京の彼女と私は、全く性格も違うのに気が合い、よく一緒に行動をしていました。厳密にいうと、押しの強い東京の彼女がなぜか私のことが大好きで、気の弱い彼を強引に誘って、私と3人でつるむ、そんな感じでした。3人で京都に行ったり、北海道旅行をしたりしました。
その二人が、今回「顔を見に」くるというのです。「快気祝いにホテル宿泊をプレゼントするから一緒に泊まろう」と提案され、お言葉に甘え「大人の修学旅行だね!」と何度もメールのやり取りをしながらその日を心待ちにしていました。なのに「雨予報」。
それでも初日早めに仕事を終えて彼らが関空と羽田から千歳に着いたのは、雨が上がった夕方でした。私60歳、京都の彼は56歳、東京の彼女は50歳。年齢・性別・住んでいるところも違う3人が、札幌で6年ぶりの再会です。
6年前に京都の彼が大興奮して喜び、「今回も!」とリクエストした、彼ら曰く「不思議なお店」を予約しておきました。最初に注文したのがカニだったので、6年ぶりなのに3人で無言でカニを食べるという笑っちゃう再会スタートでした。その後も彼は楽しみにしていたウニのてんこ盛りに食らいつき、私と彼女がしゃべっている間にホッケをほぼ食べつくし、まるで子どものように満面の笑顔でした。何を食べても美味しいお店でした。
6年の間に、私は死にかけ、彼はあれほど吸っていた煙草をやめ、彼女は飲めなかったアルコールをなぜかガンガン飲めるようになっていました。彼がタバコをやめた理由は、ワークショップに参加して休憩時間に1人で煙草を吸いに行っている間に他の参加者同士が仲良くなっているのを見て「タバコやめよう」と思ったら、それ以来吸いたくなくなったそうです。何の苦労もなく止められたという不思議な人です。彼女も、「飲めない」と思っていたんだけど、あるとき間違って飲んじゃったら飲めた。「なんだ、飲めるんだ私」と思ったら以来ガンガン飲めるようになってしまった、とのこと。今では家にビールや日本酒などが大量にストックされているそうです。まったく不思議な二人です。
翌日はなんと奇跡的にうす曇りとなり、余市までウニ丼を食べにドライブ。私は運転するのが苦手なので、娘をウニ丼で釣って恵庭から迎えに来てもらい運転手を頼みました。帰りにはニッカウヰスキー工場で、彼と彼女は嬉々としてウィスキーの試飲です。運転手付きのドライブを楽しみ帰ってきて、二人がお土産を買いに行っている間に私はホテルで一休みしました。
夜はお決まりの(?)サッポロビール園でジンギスカン。このあたりからプロコーチのスイッチが入った3人は、「コーチ道」について「コーチ業界」について熱い思いの語り合いが始まりました。「このままでは帰れないね」と場所を居酒屋に移し、更に熱い時間を過ごします。コーチになっても食べていける人は一握りの業界で、10年以上コーチとしてやってきた3人はそれなりの熱き思いを持っています。その3人が真剣に語り合えば、時に意見や見解の違いもあり、譲れないその部分をぶつけ合い、そこから更に深めていく、そんな豊かな時間となりました。こんな時間を持てるのは、お互いを尊敬しあい、違うところから豊かに創っていく力を持った、コーチとして筋力・胆力をつけてきた3人だからこそだと感じました。久しぶりに心地よい疲れの残る時間でした。
最終日は、JRで恵庭まで行き、そこから私の車に乗り換え懇意にしている農家さんに直行です。頼んでおいた朝採りのアスパラを受け取り、農業に興味のある彼はハウスでのメロン栽培について熱心に質問をしていました。農場を後にして、私の一押しのソフトクリームを牧場に食べに行き、空港で彼らを見送ったとたんに雨が激しく降ってきました。天の神さまは今回ばかりは、3人の再会に免じてお天気をギリギリ間に合うように調整してくれたようです。
余市での爽やかな風とウニ(とウイスキーの試飲)を楽しみ、北海道の美味しいものを堪能し、またの再会を約束し二人は飛び立っていきました。次回会うのは何年後でしょう。何年離れていても変わらない友情に感謝し、楽しく実り多かった3日間を終わりました。
6年ぶりに会って、彼女には持ち前のパワフルさに広がりを感じました。彼は包容力が深く豊かになっていました。さて私は6年の間にどのように変化していたのでしょう?そしてこれからも私たちはどのように進化、深化していくのでしょう。次回会うときには、どんなふうにお互いの変化を感じるのでしょうね。楽しみに生きていきます。