命というものは、つなぐものではなく完結するもの …… 東田直樹さんの言葉

掲載日:2016.12.13


 先週の土曜日に、≪アドラー勉強会≫を行いました。参加者には毎回申し訳ないと思うのですが、この日もお天気がひどかったです。飛行機もほぼ全便欠航でJRも運休や大幅な遅れとなった全国ニュースにもなった大雪の日でした。「今回も私のせいで、ごめんなさい」という気持ちでしたが、参加者は「ああ、またね」という感じで、私が何かする時にはいつも悪天候になるということは慣れっこのようでした。娘にもあきれられ「お母さんのこのムダなパワーを何かに役立てられないものかしらね」と言われてしまいました。(苦笑)
 そのようなわけで、一日中降り続く雪を眺めつつの勉強会でしたが、中身はとっても良かったです。数カ月に1度の勉強会ですが、みなさん本を読みこんできているため、話す内容が深いです。「一人で何回読んでも、ここまでの気づきは起きないでしょうね」ということが今回もありました。『嫌われる勇気』を深く読み込み実生活でも意識してきたメンバーだからこそ、そこから話すことに重みが加わって、それを重ね合わせるからこそ生まれる深みなのだと感じました。これは、他の読書会では決して起こらないことだと自負しています。
 参加者の皆さん、これからも単に頭での理解ではなく実生活に落とし込んだアドラー人生を生きていきましょうね。また次回に、みなさんが持ってきてくれる実りのシェアを楽しみにしています。そして私も、みなさんの深みやセンスの良さをすくい取れるように自分を磨いていきます。

 そのような満足感のある時間を過ごした余韻の中で、さらに自分の心が深まる番組を見ました。一つは、相模原の知的障害者施設で起こされた事件を扱った【NEXT未来のために…障害者殺傷事件が問いかけたもの】です。きれいごとからではなく、誰の中にもあるはず(と私は思っています)の重い闇の部分を見つめる勇気ある人たちの声をすくい上げた番組でした。この場では私からあえて解説はしませんが、この切り口から、さらに丁寧にこの問題に踏み込んでいってほしいと思いました。
 もう一つは、【自閉症の君が教えてくれたこと】。2年前に自閉症の東田直樹さんのことを扱った【君が僕の息子について教えてくれたこと】に続くものです。前作では、人とのコミュニケーションに困難があり自分の衝動を抑えることも難しい重度の自閉症の東田さんが書いた本によって、これまで理解されてこなかった自閉症の人たちの心の内を多くの人たちが知ることになったことなどを扱っていました。私自身にとっても、この番組は良い意味で衝撃的なものでした。
 今回は、この2年の間に癌に侵され手術や抗がん剤など一年にわたる闘病生活の末に復帰した番組のディレクターが、自分はこれからどう生きていけばいいのかという問いを持って東田さんと向き合うという内容が含まれていました。
 この問いを携えたディレクターとの対話は、東田さんがどれほど深い思索の人であるかということを、私に教えてくれました。
 その中でも特に私が印象に残った東田さんの言葉をここに書いてみます。
死を前にした時に「命ってつないでいかなきゃいけないのに、自分はもしかしたらつなげないのかなと感じた」と語る30代のディレクターに、東田さんは「あなたは、生きる上で大切なことのひとつは命のバトンだと思われますか?」と尋ねていきました。そのことに触れた東田さんの言葉を、ここに書き記します。

僕は、人の一生はつなげるものではなく、1人ずつが完結するものだと思っています。
僕は、命というものは大切だからこそ、つなぐものではなく完結するものだと考えている。
命がつなぐものであるなら、つなげなくなった人はどうなるのだろう。
バトンを握りしめて泣いているのか途方にくれているのか 
それを思うだけで、僕は悲しい気持ちになる。
人生を生き切る。 
残された人はその姿を見て、自分の人生を生き続ける。

これらの言葉は、私がいろいろな相談を受ける中で確信に近い感覚で思っていたことでした。しかし私自身は、ここまで明確に言葉にしたことはありませんでした。これを言い切れる東田直樹さんの感性というか思いの深さ、人への愛情や慈しみの深さに私は感銘を受けました。彼の深さに、私はこれ以上自分の言葉を重ねることができません。

 みなさんは、彼のこれらの言葉を、どう感じますか?
どちらもNHKの番組です。可能であれば、再放送かオンデマンドででもご覧になってみてください。