人間……
掲載日:2022.04.26
毎日、ウクライナの状況に胸を痛めています。
あまり心身にダメージを受けないように詳細には見ないようにはしていますが、
それでも現実に何が起きているかは把握しておきたいと思っています。
ウクライナの問題が多く報道されるので私たちの関心はウクライナに向きますが、
今この時にも、ミャンマーでは軍による民間人の虐殺が行われているし、
中東地域やアフリカでも多くの人々が殺されています。
他にも私たちが知らされていること、知らされていないことを含め、
この地球上で数知れない殺し合いが行われ膨大な数の人々が殺されていることを思うと、
「人間の本姓は邪悪なのだ、放っておくと戦争状態になる」という哲学者カントの言葉は、
認めたくはなかったけれど「その通りなのかもしれない」と最近の私は思うようになりました。
ただ、カントは「人間の本性は邪悪だから放っておけば戦争状態になる。
それゆえにそれを縛る枠組みが必要だ」と言って、
各国の上に位置づけられる組織の必要性を説きました。
その理念に基づいて作られたはずの国連が、
今はほとんどこれらの殺し合いに機能していないということを見せつけられています。
今このコラムを書いている4月26日に、
国連のグテーレス事務総長がプーチンと対面すると言います。
今のプーチンは誰が何を言っても考えを変えることはないだろうと
この会談に期待はしていませんが、何かミラクルなことが起きて
ウクライナの人々がこれ以上傷つけられることが無くなってほしいと強く願っています。
私たちの多くは、今ウクライナで起きていることに胸を痛めています。
人が傷ついている時、自分のことと同じように辛い気持ちになることも、
私たち人間の特性だと思います。
カントの言うように「邪悪さ」も持ち合わせているかもしれないけれど、
それと同時に「共感能力」という特性も持ち合わせていると思います。
残念ながら、その共感能力が欠如していて、他人が辛い状況にあっても何も感じないという人も
一定程度存在するということですが。
それでも今平和に暮らしている世界の8割くらいの人たちは、
今のウクライナの状況に胸を痛めているのではないでしょうか。
そう感じるのは、私がウクライナ寄りに立っているからでしょうか。
そして共感能力と共に人間の本性として備わっていると私が感じているのは、
「誰かの役に立てた時に喜びを感じる」というものです。
これはどんなに極悪人だと思われている人であっても、
(たぶんあのプーチンであっても)
その内側に備わっているものだと私は強く信じています。
「人間の本姓は邪悪」だとは私はまだ思えませんが、
「残虐性はある」とは思っています。
前回も書きましたが、私たちのうちに潜む「残虐性」は、
時と場合、状況によっては引き出されると私は思っています。
残虐性の種を内に秘めながらも、他者の痛みに共感し共に辛さを感じ、
そして自分が誰かの役に立てたり喜んでもらえたら、自分自身も嬉しさや幸せを感じる、
それが人間なのだと私は思っています。
ですから、この残虐性が引き出されないような社会の仕組みを作り、
どんな形であれ自分が他者の幸せに貢献できていると感じられる社会を創っていけたら、
今のような胸を引き裂かれるような辛い思いをしなくて済み、
みんなで幸せを感じながら生きていくことができると思います。
そんなふうに強く思いながら、一方で私の残虐性というか正当な怒りが、
「プーチン死ね」と思っています。
そして、あんな男を「一回殺しただけでは足りない」とも思っています。
「万死に値する」という言葉がありますが、
これだけ多くの人たちを殺し、更に多くの人々の人生を台無しにしたプーチンは、
何万回死んでも足りないとも思っています。
正確に言えば「殺したい」というよりは、「今の蛮行を止めたい」と思っています。
そして、「簡単には死なせたくない」「自分のやったことと向き合わせたい」と思っています。
そんな思いを抱く一方で、これは私にとって初めてのことですが、
朝と晩に手を合わせて心からウクライナのことを祈っています。
宗教は持たない私ですが、浅はかな人間の思いを超えた
神という叡智にすがってでもウクライナの人々に平安がもたらされることを祈っています。
「痛み」「共感」「理性」「残虐さ」「冷たさ」「暴力性」「宗教性」などいろいろなものが
ウクライナ問題を通して私の内側からあふれてきています。
自分の内側にあるさまざまな感情や思いを感じながら、
私はこの連休、1週間の研修に入ります。
講師がブラジル在住なので、例のごとく真逆の時差の中での研修です。
多くの人たちが休みを楽しんでいる間、私はへとへとになりながら研修テーマと向き合います。
今回の研修のテーマは、
性的トラウマ、医療トラウマ、戦争トラウマ、発達性トラウマ、自然災害トラウマなどです。
1日1テーマとして学んでいきますが、どれも非常に重いテーマであり、
そのケアや治療法は1日で身につくものではありません。
ケアや治療のほんの入り口に立ち、何らかの手掛かりを得たり、
方向性を明確にする程度だと思います。
それでも一歩でも前進したいと思っています。
特に「発達性トラウマ」に関しては、私もこれまで様々な学びと実践を通して
クライアントさんの過去の痛みを癒し、不必要な苦しみを手放し、
その人が本来持つ素晴らしさを発揮して生きていけるようサポートしてきましたが、
まだまだできることはあると感じています。
この連休、私は「プーチンへの怒りや憤りのエネルギー」を、
「一人一人が自分の人生に納得して幸せに生きることに貢献するエネルギー」に変えて、
知識とスキルと在り方をバージョンアップしていきたいと思っています。
このゴールデンウイーク中に、ウクライナ問題が何らかのミラクルによって、
現状で一番良い方法で収束できていることを願いつつ、
私は重い研修テーマに取り組んでいきます。