「一人で過ごす」「一緒に過ごす」

掲載日:2024.12.31


前回のコラムで「孤独を感じる」と書いたことで
そこを心配されてしまうことがあると知りました。
少し付け加えますね。

基本的に私は、人と接することが好きですし、
一人でいることも好きです。

一人でいて「寂しい」と感じることはほぼありません。
寂しいと感じることがあったとしても、それもまた味わい深いものです。
私はむしろ一人でいる時間がないと、かなり苦しいです。

私が「孤独を感じる」のは、本質的な深いレベルの話がしたい時に
そういう相手がいないという時です。

逆にそのような人と出会えた時には、
深いところからの喜びを感じます。

みんなが私と同じとは言いませんが
基本的に人は「他者と関わる」ことと「一人でいること」の両方が必要な気がします。

どちらの割合が大きいかは人によって違うと思いますが、
両方がその人にとっての良い割合である時、
人として真に豊かに生きていけるような気がしています。

でも多くの人は「一人でいる」ことの価値を軽んじているか
あるいは全くわかっていないような気がします。

「いつも誰かと一緒にいることが良いこと」「一人でいるのは淋しい事」
という価値観がいつの間にか社会から刷り込まれて
疑いもなく思い込んでいる人が多いことを感じます。

「一年生になったら、友だち100人作るんだ♪」という歌があるように、
「友だちは多いほうがいい」「いつも友だちといる子が健全」
というような価値観がいつのまにか心に忍び込んでいるような気がします。

もちろん何かに苦しんで「一人でいる」なら、
周りの人が気づいて手を差し伸べる必要があるでしょう。

でもそうでなく「そうしたいから一人でいる子」を
周りの人が「一人でいるのは問題がある」という価値観や視線で見て
「そんなことではダメだ」と否定していたら、
例えば「さかなクン」も「磯田道史さん」も存在しなかったかもしれません。

彼らは学校ではいじめに遭ったこともあるようですが
少なくとも親など身近な人たちから「一人でいる」ことを否定されなかったからこそ、
歪むことなく成長することができて、
現在のように自分を活かして幸せに活躍するようになったと思います。

そして「さかなクン」も「磯田道史さん」も
いつも友だちとワイワイする子ではなかったとしても、
他者と全く関わらないで生きていくこともできなかったと思います。

「ちゃんと一人でいることができる人」が、
「本当の意味で他者と関われる」と私は思います。

年末年始にかけて「家族団らん」がクローズアップされることが多いですが、
そのイメージに苦しんでいる人たちも少なくありません。

もちろん本当に「家族団らん」を楽しみ幸せに過ごしている人たちを
私は心から「素敵」と思います。
そのような家族を見ると、心がほっこりします。

でも実は「偽物の家族団らん」の中で苦しんでいる人も多くいます。
この時期は「実家に帰省するのが辛い」という駆け込み相談が多くなります。

多くの人は「家族」を、いつも愛情に満ちて素晴らしい関係だと信じたいようです。
その大きな社会的思い込みの圧力が、
家族に苦しんでいる人たちの口を閉ざすことを強いています。

もしも本当に「家族」の多くが愛情に満ちた関係でいるとしたら、
日本の殺人事件の半数以上が親族によるものだという事実をどう説明できるのでしょうか。
それほど「家族」とは、実は問題をはらんでいる集合体なのです。

いつも言いますが、家族であろうと誰であろうと、
あなたを傷つけて平気な人とムリに一緒にいる必要はありません。

「家族だから我慢しなければならない」という思い込みは捨てましょう。
「一緒にいて楽しい・安心する」人たちと過ごせばいいのです。
一人一人の「思い込み」を捨てれば、本当の意味で幸せな人が増えると思います。

何度も言いますが、「家族といて幸せ・楽しい」人は、もちろんそれは素晴らしいことです。
私は武者小路実篤の「仲良き事は美しき哉」という言葉が昔から好きです。

しかし、もしも家族といて緊張したり辛い気持ちになるのであれば、
ムリに我慢する必要はないのです。

あなたは誰とどう過ごしたいですか?

「ひとりが安心する」のであれば「そんな自分はダメ」と思わないで
安心して一人の時間を好きなように過ごしましょう。

誰の人生でもありません。
あなたの人生なのですから、他人や社会の価値観に沿わないからといって
「自分にバツ印をつける」必要はありません。

新しい年は、どんな自分で過ごしたいですか?

一人でじっくりと考える時間を持つことは、実はとても大切なことです。

いつも「情報」の渦の中にいて「すること」に追い立てられている人も、
ただ、「今・ここ」の自分を感じる時間を持つ。
「Doing」の日常から離れて、「Being」でいてみる。

そこであなたは何に気づくでしょう。

家族と過ごす人であっても、どこかで一人の時間を持つことは、
あなたに貴重な何かを差し出してくれるような気がします。

一人一人が、「自分はこう過ごしたい」と思う良い時間を過ごされますように。