子どもの頃に受けた心の傷は
掲載日:2023.01.31
先週末(木金土日)は4日間の研修トレーニングを受けました。
午前中は講義、午後は仲間とのトレーニングです。
いつにも増して疲れました。
午前の講義がハードでした。
アメリカ人の講師が使う膨大なスライド資料はすべて英語で、
同時通訳がつくとは言っても内容を理解しながらついていくのはなかなか大変でした。
私よりずっと若い仲間たちも「1割しか理解できない」と嘆いていました。
ついていけないのは私の老化のせいばかりではなかったようです。
私は普通の人よりは人間の脳の構造や機能について学んできている自負があります。
でも今回の講義は、そのレベルを超えていました。
脳幹や大脳辺縁系、前頭前皮質、などのレベルではない
さらに細かい脳の構造やその機能、詳細な右脳・左脳の情報処理の違いなど、
神経生物学やエピジェネティクスを含む細胞生物学にまで及ぶ講義でした。
なぜそのような難しい研修を受けているかというと、
脳や脳神経、細胞レベルの理解が、
子ども時代に親から辛い対応をされ、
大人になっても生きづらさを抱え苦しんでいるクライアントさんたちへの
援助の役に立つからです。
出生から子どもの成長発達に伴う親の関わりが、
どのように子どもの発達を促進したり阻害していくか、
子どもがどのように(自己肯定感や否定感を含め)自己を認識していくかを理解し、
クライアントさんたちの生きづらさや困難をより理解していくためです。
「不適切なかかわりが、子どもの脳を変形させる」ということは
日本でも友田明美さんが一般向けに本も出しています。
とは言っても、子どもの脳の成長発達や阻害に関して理解するだけでは、
大人になって苦しんでいるクライアントさんの十分な助けにはなれません。
私たちセラピストにとっては、「そこからどう回復させていくか」が大事です。
子どもの頃に親から受けた心の傷の記憶は、左脳にはほとんどありません。
はっきりとした顕在記憶としてあるというよりは、
潜在記憶として脳の深い部分に刻まれています。
それゆえに、言葉によるカウンセリングでは心の傷を癒すには
限界があるのです。
潜在記憶として刻まれ、苦しみの元になっている心の傷にどう働きかけていくか。
それこそが私の仕事です。
そのような意味では、私自身はある程度の脳の機能の理解の上で、
クライアントさんたちが目の前で表出する状況と向き合う中で、
どう関わったらこの苦しみや痛みから解放の手助けができるかを
全身全霊で感じ考えてきました。
実践から体得してきた私のセッションを通しての関わり方が
今回の脳や神経系、細胞レベルでの詳細な学びを通して
「それでよかったのだ」と納得を得られた感があります。
経験としての「このような関わり方がクライアントさんの役に立つ」という確信が先にあって、
セッションとして実践してきたことが、
今回「それで良いのだ」とお墨付きをもらったような、
知識としての納得感がありました。
とは言え、今回の研修では、自身の記憶力、集中力、体力の衰えを痛感しました。
2日経った今も疲労が十分には回復していません。
それでも頑張り通せたのは、やはり
辛さを抱え苦しんでいるクライアントさんたちへの強い思いがあったからです。
そして、老化に抗いながらも頑張っている私を癒してくれたのは、
一緒に学び合う仲間たちの存在でした。
今回も、住む地域や年齢が全く違う仲間たちと学び合いました。
そんな仲間たちが私と組んで練習することをとても喜んでくれました。
同じ受講者同士ではありましたが、若い彼らを支えることも私の喜びとなりました。
志のある、ハートの温かい優秀なセラピストたちが育ってくれたら、
日本中のもっと多くの苦しんでいる人たちが救われるようになるだろうと思います。
その希望を持ちつつも一方では、私たちセラピストのやっていることは、
親から傷つけられ辛い人生を生きている人たちへの対処療法でしかありません。
本当は、子どもたちが親から傷つけられないような社会になることが一番です。
この社会が全体としてもっと優しい社会になることが必須だと感じます。
そのために私たち一人一人ができることはあると思います。
今、自分の周りでほんの少しだけ
優しさや温かさを誰かに伝えることから始められると思います。
例えばコンビニの店員さんに笑顔で「ありがとう」ということや
宅配の人にいつも以上に心を込めて「ありがとう」を伝えることから
温かさが広がっていくでしょう。
そんなところから私たち一人一人が始めていくことができれば、
少しずつこの社会は良くなっていくような気がします。